本事案では、主治医は当初の病院(A病院)及び転職先の病院(B病院)で、末期肝硬変の患者さんに対し、生体肝移植を一切念頭に置かずに治療を継続していました。
その後、患者さんの肝硬変の悪化による容態急変後に、A病院に救急搬送され、同病院の副院長が主治医となりました。同副院長は、容態が安定すれば生体肝移植をするための準備をしており、提供予定者は患者さんの息子さんでした。
しかし、患者さんは容態が安定する前に死亡しました。
そこで、同副院長が遺族とともに私どもに相談に来られました。
証拠保全の申立てをしてカルテ等を入手し、同副院長(協力医)と相談の上で提訴しました。
判決は、生体肝移植の存在を前提に重篤な肝硬変について検査・診断・治療等に当たることが、病院に要求される医療水準であり、主治医の過失の基準としての医療水準でもあると認めた上で、 当人や遺族に対して生体肝移植についての言及を一切しなかった主治医には説明義務違反の過失があると判断しました。
その上で、同説明義務違反と患者さんの死亡との間に相当因果関係は認められないものの、死亡時点において患者さんが生存していたであろう相当程度の可能性があるとして、合計480万円の損害賠償請求を認めました。
「相当程度の可能性の法理」とは、最高裁平成12年9月22日判決が認めた判例法理で、死亡と医療過誤の因果関係が立証できない場合でも、適切な医療を受けていれば、 死亡時点では生存していた相当程度の可能性があれば、賠償義務を認めるとの法理です。
かかる法理による賠償額の相場は、約200~300万円と言われていますが、本事案ではそれを大幅に上回る480万円の賠償額が認められました。
この判決は、類似先例の見当たらない新しいケースについて、いわゆる「相当程度の可能性の法理」で賠償義務を認めたものとして、下記のとおり、多数の著名公刊物に登載されております。
判例時報2116号97頁、医療判例解説39号2頁(2012年8月号)、池田健次・医療判例解説39号7頁(2012年8月号)、川﨑富夫・年報医事法学 27号143頁、医療訴訟判例データファイル(説明義務)。
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